子宮筋腫の膣式手術
子宮筋腫の膣式手術とは、おなかを切らずに膣から器具をいれて
手術する方法です。
全摘術と核出術が行えますが、膣式子宮筋腫核出術は、
とてもむずかしい手術方法なので、あまり行われていません。
ここでは、主に膣式子宮全摘術についてお話します。
膣式子宮全摘術は、膣の一番奥を切開し、
そこから子宮を引っ張りだすようにして摘出する方法です。
卵管や卵巣は、病変が無ければそのまま残します。
子宮を支える靭帯を切断したあと、腹膜に卵管や卵巣を
縫い付けておくので位置が変わることもありません。
膣式手術のメリット
膣式手術は、回復手術のようにおなかを切らないので、
手術創が残りません。
通常、手術後の痛みは傷口に感じるものなので、
おなかを切らない膣式手術は、痛みも軽く、
回復が早いことが、最大のメリットです。
手術時間は1時間から2時間ぐらいです。
出血量は少ないので、通常は輸血の必要はありません。
ただし、癒着などによる予測不能の出血があった場合は、
緊急に輸出したり、開腹手術に変更になったりすることが
あります。
膣式手術が適応する条件
膣式の適応条件はかなり絞られます。
- 子宮の大きさがにぎりこぶし以下
- 手術の既往がない
- 出産経験があり、膣がある程度広がる
- 子宮周囲の癒着の可能性が低い
腹腔鏡を使用することでより安全に
膣式手術の欠点は、手術の際の視野が狭いことです。
そのため、筋腫が大きいときや癒着があるときには、
膣式での手術は難しいとされていたのですが、
最近では、腹腔鏡を併用することで、
そのデメリットをある程度カバーできるようになりました。
膣からだけで全摘手術する場合を膣式単純全摘術と
呼ぶのに対し、腹腔鏡を併用する方式を
腹腔鏡補助下膣式子宮全摘術(LAVH)と呼びます。
腹腔鏡で癒着の剥離や靭帯切断などの操作を行うことと、
膣から子宮を摘出することの、両方を併用して
手術が進められるので、手術の安全性が高まり、
癒着があったり、これまで無理だった大きな子宮でも
取り出せるようになってきています。
ただし、手術時間は膣式単純全摘術よりもかなり長くなり、
また実施している施設も限られるので、医師との相談が必要です。
筋腫分娩の摘出
有形粘膜下筋腫で、筋腫が子宮より飛び出した筋腫分娩の場合、
膣から筋腫のみを切除(核出)することができます。
この術式は膣式子宮筋腫捻除術と呼ばれます。
もっとも簡単な方法は、子宮を飛び出した筋腫をまわして
茎部をねじきる方法ですが、これは盲目的な方法でもあり、
出血が多くなることがあります。
より安全な方法は、子宮鏡下で茎部を確認しながら切除する
方法です。
茎部の切断を子宮鏡で確認しながら安全にすすめることができ、
切除後の出血点も凝固止血することができます。
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