子宮筋腫と性生活
一昔前まで、子宮筋腫は主に中年女性がなる病気と考えられていましたが、近年では出生率の低下や高齢出産の増加などにより、若い女性の患者さんもかなり増えています。健康診断や定期検診などで、自覚症状もないのに子宮筋腫が見つかってびっくりする人も多いでしょう。
子宮筋腫は良性の腫瘍で悪性化することもほとんどないので、発見されたとしても、特に困った症状がない場合は、多くの場合、経過観察になります。
若い女性で子宮筋腫が見つかったり、手術をした人の中には、セックスは控えたほうがいいのかしら、もうセックスできないのかしら、と不安に思う人も多いことでしょう。ときには、筋腫のことが気になり、パートナーからのセックスの誘いを断ってしまうこともあるかもしれません。
しかし、セックスは子供を作るためだけではなく、パートナーとの大事なコミュニケーションの手段でもあります。パートナーとのセックスを避けているうちに、関係がギクシャクして、信頼関係すら失ってしまうことだってあるでしょう。
子宮筋腫ができてもセックスは問題なくできます
子宮筋腫は、子宮にできた良性のできもので、いわば「いぼ」みたいなものであり、セックスに影響されるものではありませんし、何かの影響をあたえるものでもありません。
子宮筋腫ができていても、セックスは問題なくできます。
俗説では、セックスしすぎると子宮筋腫ができたり、大きくなったりすると言われることもあるようですが、こういったことは一切ありませんので安心してください。
ただ、筋腫の位置や大きさによっては、挿入の際に筋腫にこすれるなどして、痛みを感じたり、ときには出血を伴うこともあります。そのようなときは、医師に相談するなどして、筋腫に対する適切な助言を受けるようにしましょう。
子宮筋腫の手術後のセックスへの影響は?
子宮筋腫の手術を行うことで、セックスに問題が起こることは基本的にありません。
子宮筋腫核出術では、子宮を残して子宮筋腫の核を取り除くだけですので、子宮や膣、卵巣はそのまま残り、影響はまったくないのです。
子宮全摘術を受けた場合でも、膣や卵巣に異常が無ければ、子宮を取るだけで、膣や卵巣の機能は変わりませんし、性欲も変わりません。
よく子宮からホルモンが出ると思っている人がいますが、女性ホルモンが分泌されるのは卵巣からであり、子宮をとってしまっても、卵巣からは正常にホルモンの分泌が続きます。
女性らしさが失われることもありませんし、ちゃんと分泌物もありますから、性交する上でもなんら問題ありません。むしろ妊娠の心配がなくなってよかった、という人もいるぐらいです。
手術後のセックスは、術後1ヶ月後ぐらいからが目安です。1ヶ月後検診などで傷の治りや体の回復具合を診てもらえるので、そろそろセックスしてもいいか、確認してみるといいでしょう。
術後の性交によるトラブル
術後の性生活に問題はありませんが、何らかのトラブルが起こる可能性はあります。出血や性交痛は問題ないトラブルですので、そのようなときにあわてないようにしましょう。
出血
子宮の手術を受けた際に、縫合傷から肉芽ができることがあります。
肉芽とは、傷口にできる結合組織の盛り上がりで、セックスした際に、その部分がこすれて出血することがあります。
肉芽は硝酸銀で焼灼して簡単に治療できます。外来でもできる簡単な治療です。
性交痛
セックスのときの単純な挿入時に起こる痛みであれば、手術に関係ない場合が多く、膣の潤いの低下や外陰部の炎症などによることがほとんどです。特に更年期の女性に多い傾向があります。
突き上げたときの子宮が動くときに感じるような痛みであれば、手術の影響で子宮と周りの組織に癒着が起こっていることが原因の場合もあります。この場合は主治医に相談してみてください。
相手への気づかいを忘れずに
手術してもセックスするのに問題はありません。でもそれは身体的な面でという意味であって、いざ手術を受けるとなると精神的に不安を感じてしまうことは仕方がないことです。
そして、本人が不安になるのはもちろんのことなのですが、パートナーが同じ気持ちを抱くこともあります。
男性の中には、子宮を取ると女性ではなくなる、という偏見を持つ人もいまだに多く、無知から女性を不用意に傷つけてしまうことも多いのです。
パートナーには手術後の性交に何の問題も無いことを理解してもらい、コミュニケーションを正しくとって、病気の治療に専念できる環境を作ることが大事です。検診や退院のときにパートナーも同席して、直接医師から不安を解消してもらうのもいいことでしょう。
セックスの面だけで言えば、手術そのものよりもパートナーとの関係性が大事です。いっしょに病気に向き合い、理解と協力が得られてこそ円満な関係が築けると思います。
男性側からは、術後で不安いっぱいの女性にセックスを強要したり、子供がほしい気持ちをアピールしすぎることは禁物です。術後1ヶ月を過ぎて身体的にはセックスが可能になっても、じっくりと時間をかけて話し合い、相手に思いやりを持って、あせらずにゆっくりとスタートしていくことが大事です。
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